「UXデザイン」という言葉が巷に出てから久しいですが、この本はUXを学ぶ一歩目としておすすめです。私の周りにはUXに明るい人が多く、色々な話を聞くのですが、正直、具体的にどのようなアプローチすれば良いUXを作れるのかが全く分かっていませんでした。しかし、この本を読みUXデザインの本質が少し見え、専門家の話も腹落ちできるようになりました。
- 作者: 松村真宏
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/09/23
- メディア: Kindle版
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Webサイトやアプリデザインをしている友人から、UX関連の相談を受けることがあるのですが、まずはこの本を紹介しています。ただ、紹介するときに「学びは何なの?」に上手く説明することができなかったため、今回、改めてこの本からの学びを整理することにしました。
仕掛学とは
解決したい課題があったときに、その解決策は無限にあります。無限にあるのですが、その中で「刺さる」解決策はごく一部で、我々は「刺さる」解決方法をデザインしないといけません。仕掛学では、下記のような解決策を狙います。
「した方がいい」と伝えても効果がなく、「ついしたくなる」ように間接的に伝え、結果的に問題が解決することを狙う #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
本の中で紹介されていたわかりやすい例として、漫画ドラゴンボール単行本の背表紙の絵によって整理整頓を実現する話がありました。
漫画本を集めていくと、本棚から一部がなくなってしまったり(違う場所にある)、巻の前後関係が変わってしまうことがあります。「整理整頓しよう」と言ったり、意識したりするものの、どうしても放置されがちです。
ドラゴンボールは全42巻なのですが、1巻から順番に並べると一つの絵になります。筆者がそれを意図していたかはわかりませんが、 「整理整頓してほしい」
「順番に並べてほしい」
という想い(課題)を、 「絵を揃えたくて順番通り並び替えたい」
という「ついしたくなる」デザインによって実現しています。
もしかしたら、途中で単行本を買うのをやめた読者に対して、「背表紙を全て揃えたい」という想いを持ってもらい、最後まで買い揃えてもらう意図もあるかもしれません。「漫画を読みたい」という元々の想いだけでは、週刊誌を買えば解決してしまうので、それにプラスした価値を提供していると言えると思います。
いい仕掛けとは?
「いい仕掛け」の大前提として、後味がいいことが挙げられます。
いい仕掛けは、仕掛ける側とられた側の双方の目的が分かった時に、「素晴らしい!一本取られた」と笑顔になる。悪い仕掛けは、「騙された、もう二度と引っかからないぞ」となる。 #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
「騙す」ことで一時的に収益を上げたりしても意味がなく、利用者にとって真に価値のある「体験」をデザインしてあげることが大切です。
定義的な話でいうと下記が「いい仕掛け」が満たすべき条件です。
仕掛けを定義する3つの要件。Fairness: 誰も不利益を被らない / Attractiveness: 行動が誘われる / Duality of purpose: 仕掛ける側とと仕掛けられる側の目的が異なる #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
どれもここまで説明してきたもので、「騙すわけではなく」「ついつい行動してしまい」「実は行動者とデザイナーの目的が異なる(絵を揃えたい/整理整頓してほしい)こと」が必要条件になります。「直接的ではなく結果的に課題を解決すること」を狙い、行動を制限せず、行動を誘発することを狙います。
「した方がいい」と伝えても効果がなく、「ついしたくなる」ように間接的に伝え、結果的に問題が解決することを狙う #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
仕掛けの具体例
この本の中では、30以上の面白い仕掛けが紹介されてます。その中で、面白いと感じたものを3つ紹介します。
トリックアートの例は面白いー。うまく撮れた写真を「見てもらいたい」という行動と、ディスプレイを「見てもらいたい(宣伝してもらいたい)」が繋がる。インスタ映えな料理を作る店も近いかなー。ちょっと狙いすぎか。 #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
綺麗に撮るのが難しいトリックアート型の広告を用意することで、インスタで「上手く撮れた」とアピール(行動者の目的)してもらいそれを販促(デザイナーの目的)に繋げています。誰も不幸にならないWin-Winなデザインと言えると思います。
一つだけチョコの匂いがするよ、というトッポのポスターも好き。 #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
駅構内にいくつかポスターが貼ってあり、1つだけいい匂いがするという例です。新しい体験やゲーミフィケーション的な要素を加えることで、販促に繋げる例です。
リカちゃん人形は誤飲防止のために苦い味の塗料が塗ってある。なるほど。 #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
この例は特殊で、「食べちゃダメ」と直接言うのではなく、「食べてもメリットがない」という体験によって「誤飲防止」という目的を達成しています。
いい仕掛けをつくるには
本の中で、仕掛けを16のパターンにカテゴライズしています。このパターンを参考に、仕掛けのアイディエーションをすることで、新しいアイデアが出てくると感じました。
仕掛けを3階層、16のパターンに分類してる。仕掛けを考えるときに便利そう。 #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月26日
仕掛け発想法。仕掛けの事例を転用する。行動の類似性を利用する。仕掛けの原理を利用する。オズボーンのチェックリスト。 #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月27日
また、筆者は「子どもを観察することで、巷の仕掛けに気が付きやすい」と書いています。子どもの方が反応が素直(オーバー)なので、デザインによる反応が分かりやすいからです。
子供を観察すると仕掛けを見つけやすい #仕掛け学
— ちゃんけ (@ketancho) 2017年10月27日
エンジニアとして「仕掛学」をどう活かしていくか
大抵のものは揃っている近年ですが、まだまだ世の中には不がたくさんあると感じています。これらの不の多くは「誰も対応してこなかった」ものではなく、「対応しようとしたが上手く定着しなかった」ものではないかと考えています。
そのような課題に対して、直接的にアプローチするのではなく、
- 不をブレイクダウンさせ、不の根底を洗い出す
- その根底に対し、間接的に解決を促すようなソリューションを考える
ことにより、日常に根付く真の解決策を提案・実現できないかと考えています。私はUXの専門家ではありませんが、まずは新しい価値創出の初手としてこの考え方の型を使っていこうと思います。
もしよければ読んでみてください。
- 作者: 松村真宏
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/09/23
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