"ゲーミフィケーション" を考える

こんにちは、@ketancho です。みなさんは "ゲーミフィケーション" という言葉をご存知ですか?日頃の行動であったり、勉強であったりに、ゲーム的な要素を加えることでその効率や成果を高めるもの、と私は理解しています。最近 Progate を始めたのですが、コンテンツを進めると "レベル" が上がる仕組みがあり、まさにこれがゲーミフィケーションだと思っています。

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私は「仕掛学」という本が好きなのですが(記事はこちら → 「仕掛学」を用いた「ついしたくなる」UXデザインを考える - log4ketancho)、この「仕掛学」の "ついやってしまう仕掛け作り" に近しいものがあると思っています。仕掛学は「"その瞬間" ついやってしまう」という短期的な行動を促しているのに対して、ゲーミフィケーションは「つい "継続" してしまう」という長期的な行動を促している点が違う気がするものの、"つい"、"自然と" というポイントは同じなのかなと思っています。

最近、新しい企画を考える際に、ゲーミフィケーション的な要素を取り入れ、継続的に参加してもらえる仕組みを作りたいと考えることがあります。しかし、ゲーミフィケーションのなんとなくの定義は理解していたのですが、具体的にゲーミフィケーションをどう取り入れるか、という方法論を知りませんでした。このゲーミフィケーションは、きっと汎用的な、様々なシーンで使えるスキルになるのではないかなという想いがあり、少しずつ勉強をしていきたいと考えています。

その第一歩として『ゲームにすればうまくいく』という本を読んでみたので、今回はこの本を元に思考を巡らせたいと思います。

ゲーミフィケーションの定義

本書では「ゲームにする」ことを「製品やサービスを提供するビジネス活動全体の中に、ゲームの要素を入れていくこと」という形で定義しています。この「ゲームの要素を入れる」プロセスを "g-デザインブロック" というフレームワークで紹介しています。

このフレームワークでは、

  • 可視化
  • 目標
  • オンボーディング
  • 世界観
  • ソーシャル
  • 上級者向け
  • チューニング
  • ゴール
  • おもてなし

という9つのポイントを意識しながら、ゲーミフィケーションを導入するとよいとされています。細かい定義は本書を読んでいただくのがよいと思うのですが、私はいきなり全てを意識するのは難しいと思ったので、まず初手として考えていきたい項目について整理しようと思います。

可視化と目標

可視化と目標の例として、RPG の経験値システムが紹介されていました。「次のレベルまであと 1,246」というような形で可視化することで、目標が明確になり、プレイヤーのやる気を持続しやすくするという狙いです。可視化のポイントとして、本書では

  • 数値として表現できるもの
  • 何を可視化するかを間違えない
  • ビジュアル化して変化や比較を視覚的にわかりやすくする

の3つが挙げられていました。

この2つ目の「何を可視化するかを間違えない」が、特に重要だと思いました。可視化すると、良くも悪くも人はそれを目標にします。最終的なゴールにベクトルがあったものを可視化しないと、誤った方向に向かってしまいます。なので、小さい目標をクリアしていくと自然と大きいゴールが達成されるものを選ぶことが大切、という話ですね。

また、可視化したもの(数字)が、自分の行動によって変化するものを選ぶことが大切だと考えています。コントローラブルでないと、モチベーションが継続しないからです。

ただし、ここで自分の行動がダイレクトに反映され "すぎる" のもよくないとも考えています。言語化するのが難しいのですが、自分で全てコントロールできる数字にしてしまうと、本質を見誤りやすいと感じています。本質を見誤った例に最近遭遇するので、最後に紹介します。

チューニング

ゲーミフィケーション的な要素は一度設計して終わりではなく、常にチューニングを意識しようという話も紹介されています。チューニングのポイントとして、

  • 顧客との関係性のよさを表現する KPI を設定する
  • その KPI の推移を見られるようにし、改善するにはどうすべきかを分析する
  • その分析の結果に基づいて、対策を行う

の3つが紹介されています。"つい継続してしまう" ように設計した施策が、本当に効果が出ているかをモニタリングし、PDCA を回そうという話ですね。

「顧客との関係性のよさを表現する」というのが、簡単に書いてありますがなかなか難しいと思っています。当然施策に関連する項目である必要があり、それが伸びることが、チームや会社にとってもプラスである指標を選ぶ必要があります。実際に、ゲーミフィケーションを用いた施策をやらないと、ここを妄想するのは難しいなと感じています。

良いゲーミフィケーションを探す

ここからは身近なゲーミフィケーションに思いを馳せたいと思います。まず、先程の本を読んで、ゲーミフィケーションには、内向けのものと、外向けのものがあることに気が付きました。前者は従業員のモチベーションを上げる仕組みを作り、最終的にはその先のお客さんの体験に繋がる狙い、後者は直接お客さんにゲーミフィケーションを体感してもらう根ありです。

内向けなゲーミフィケーションで、ぱっと思いついた成功例はマクドナルドの技能コンテストです。以前、メディアで特集されていたのですが、例えば素早く正確にハンバーガーを作ることを、従業員同士で競う仕組みです。これを目標に活動しているクルーが多くいるそうで、どうすれば入賞できるか日々腕を磨いているという特集でした。

www.mcdonalds.co.jp

この例の特によいと思うところが、従業員がこの目標に向けて日々努力することが自然と業務効率を上げることに繋がり、最終的には顧客満足度を上げることに繋がるという点です。後ほど紹介する失敗例のように、内向けの施策や KPI 設計を間違えると、その数字だけを追ってしまい、それが目的になってしまうことがあると思います。マクドナルドの例は、従業員、マネージャー、経営陣が見ているもの・目指しているものは違えども、同じ方向を向いている設計になっていると思います。

外向け、つまり直接的なユーザー体験の例としては『ポケモンスマイル』がお気に入りです。このアプリ自体がゲームなので、ゲーミフィケーションの例として取り上げるのが適切か分かりませんが、子どもから「歯磨きしたい」と言ってくれるなんて素晴らしい世界だと思います。"しっかり磨けばポケモンがゲットしやすくなる" という仕掛学的な設計と、"毎日磨けば図鑑が埋まっていく" という長期的な設計がどちらもうまく言っている例なのかなと思います。

www.pokemon-smile.jp

失敗しているゲーミフィケーション

逆に、最近失敗しているゲーミフィケーションだと感じるのが、メディアの KPI 設計です。最近、読者をミスリードさせるようなタイトル多くないですかね?

裏側のことは何も分かりませんが、おそらく記事の良し悪しを PV 数で測っているのだと思うんです。もちろんタイトルから記事ページに遷移してもらわないと、時間をかけた文章を読んですらもらえないので、タイトルを "工夫" すべきなのは同意です。ただし、事実や記事の内容をミスリードさせてまで稼ぐ PV 数に何の意味があるのだろうと思います。タイトルと内容がミスマッチなのは最悪のユーザー体験ですよね。

もちろん、ミスリードさせるタイトルを付ける記者も悪いのですが、それと同時に KPI 設計で失敗していると考えています。最初は、記者のモチベーションのために、PV数を見える化し良い記事はを評価したい、という意図だったのだと思います。

しかし、このゲームに抜け穴があると、制度がハックされ、ユーザーを置いてけぼりにした点数稼ぎに走る人が出てきてしまうわけです。結果、先程のマクドナルドの例とは異なり、PV数さえ稼げればいい、読者のことを考えない記事が誕生してしまうのではないでしょうか。まさにチューニングが必要な例だと考えます。

まとめ

ゲーミフィケーションに関する本を読み、世の中にあるゲーミフィケーションについて考えてみました。設計次第でユーザー体験が良くも悪くも変わることを改めて認識しました。

次は、自身の企画で試してみようと考えています。一発でうまくいくことを狙うのではなく、フィードバックを受けて PDCA を回すという意味では、普段とあまり変わらないと思いますので、小さく始めていければと思います。それでは!