【UXデザイン】「構造化シナリオ」手法による要求/要件定義の進め方 #uxtryout

 サービスデザインをする際に、「不の調査結果」を「ソリューション」に落とし込んでいく必要があります。要求定義から要件定義へのフェーズです。このフェーズのアウトプットを出す際に「構造化シナリオ」という手法があるそうです。今回はその勉強会に「ブログ書く枠」で参加させていただいたので、レポートしていきたいと思います。

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座学

構造化シナリオとは何か

 シナリオ手法の一種で、理想シナリオを「短編小説風」に記載したもの。*1

  • 価値シナリオ
    • そのプロダクトを使って得られる価値を、簡潔に記載する
  • 行動シナリオ
  • 操作シナリオ
    • 取扱説明書のような文章の粒度

の3つから構成され、徐々に詳細化していく。

構造化シナリオのメリット

  • プロダクト/サービスのイメージをチーム全員で共有できる
  • 短期間に作成し、そのレビューによって、妥当性の評価を行うことができる
  • 構造化されることにより、ユーザ要求・要件の抽出ができるようになる

シナリオを作成するときに留意すべきこと

  • ペルソナを事前に作成されていること(インプットになる)
  • ペルソナが複数いる場合は、その分だけシナリオを作成する必要がある。もし、ストーリーの分岐が発生する場合は、あるペルソナはストーリーAを、あるペルソナはストーリーBを進むようにするといい
  • 必要があればグラフィカルな表現を心がける(例:挿絵、ストーリーボード、ペーパープロト)

シナリオとカスタマージャーニーの使い分け

  • どちらかがあればよく、作る目的も内容もほぼ同じ
  • 構造化し、要求/要件を抽出できればよい
  • 強いて言うなら、、
    • カスタマージャーニーはユーザーの作業手順ごとに細かいフローが記載されているので、どの工程でどの機能が必要かわかりやすく、開発者にとっては分かりやすい
    • ビジネスサイドやマネージャーにとっては、シナリオの読みやすいので好まれる傾向がある

ワークショップ

1) 新サービスのアイデア提案

 新サービスやプロダクトについて、「タイトル」「簡単な説明」を書いていきます。

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2) アイデアの本質的価値の明確化

 次に、このアイデアの本質的な価値ってなんだっけ?を整理します。調査によってわかった利用者の不を解消しているか、を意識します。1) と分けて書くことで、あらためてアイデアが本当に「ソリューション」になっているかをチェックします。この「本質的価値」を簡潔に書いたものが、「価値シナリオ」となります。

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3) 行動シナリオ作成

 ここから行動シナリオを作成します。文章としてきれいに書くことを意識するようにアドバイスをいただきました。幾つかのフェーズに分けてアウトプットを作成したので、順をおって見ていきます。

3-1) 主人公の行動と状況を箇条書きにする

 まず、主人公の行動、その行動に繋がった状況の移り変わりを列挙していきます。ユーザーの「想い」はこの後のフェーズで記載するので、ここでは書かなくて大丈夫です。

3-2) シーンの切り替わる箇所を明確にする

 次に、シーンが移り変わった場所に付箋をはります。ここまでの成果物はこんな感じです。

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3-3) 「心の声」を記述

 続いて、主人公の感情が大きく動いたときに、その「心の声」記述します。他の人が読んだときに、説明しなくても済むような粒度で書くようにアドバイスを頂きました。とはいえ、全ての行動に「心の声」を書かないといけないわけではありません。

3-4) 挿絵を書く

 もし、文章だけでは描写できない場合に、挿絵を描く。私は挿絵を描きませんでした。(絵心ェ... )ここまでの成果物はこんな感じです。

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3-5) ハッピーエンドを書く

 行動の箇条書きだけだと、ペルソナがどのようなハッピーエンドを迎えたのか分からないことがあるそうです。わかりやすさのために、最後に改めてこれを簡潔に書きました。

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ここまでで行動シナリオが完成です。

4) 各シーンにおける目的の明確化

 操作シナリオを作っていきます。まず、各シーンごとに、ペルソナが得たい成果や体験を書く。各シーンごとの中間目標が明確になっていることがゴールです。(プロダクトが出てこないシーンについては、書かなくてもいいそうです。)

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 (ワークショップではやらないが、)ここでストーリーを見直すこと。目的が達成できていなかったり、よりよい方法が見つかるかもしれません。これに気付くことが、行動シナリオを作る理由の一つなので、しっかり振り返りをすることが大切とのことです。

5) タスクの抽出

 プロダクトであれば、これが取り扱い説明書の目次になるイメージです。

  • アプリを起動する
  • ログインする

などの粒度で記載していきます。ここまで作成してきた行動シナリオには、提案するプロダクトに直接関係ない情報も含まれているので、関係あるもののみを抽出するように意識します。これが、いわゆる要件になります。

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6) 操作シナリオの作成

 各シーンにおけるタスクを達成するために必要な作業手順を箇条書きで書いていきます。ワークショップでは、ひとつのシーン分のみ作成しました。

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私の Next Action

□ 小1の壁の件について、ペルソナを作る
□ 「構造化シナリオ」に落とし込んでみる

まとめ

 「構造化シナリオ」自体知らなかったので、非常に勉強になりました。座学だけではなく、実際に手を動かせるのがいいですね。都合が付けばペーパープロトの回も行ってみたいです。

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 以前参加した、ユーザーインタビューの勉強会レポートがこちらです。あわせてご覧いただければと思います。

www.ketancho.net

*1:「分析をモデル化したものが、シナリオ。それの理想シナリオ化したものが構造化シナリオ」という口頭説明がございました。