以前から読みたかった「Joy,Inc」を読みました。とてつもなく良かったです。あっという間に読んでしまいました。

- 作者: リチャード・シェリダン
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2017/01/20
- メディア: Kindle版
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メンロー社が「全社員が仕事に喜びを感じられる環境」をどのように作ったかという話です。ストーリー仕立てになってるので非常に読みやすいです。感情移入しながら読めます。下記に該当する人は、読むと学びがあると思います。
- エンジニアの方
- 特に、XPに関心がある方(3章)、アジャイル開発に関心がある方(4章)、サービスデザインに関心がある方(6章)はおすすめです
- エンジニアではなくても、ものづくりに関わる人は横展開できる学びが多いと思います
- そして何より、人事の方、採用担当の方、「働き方改革」と言っている方、偉い方々、には読んでいただきたい!
この記事では私が特に勉強になった、
- ペア作業の話
- アジャイルな話
- 採用の話
- サービスデザインの話
について、自分の学びをメモしつつ、感想を書いていきます。
ペアプロ・ペア作業
3章 頭が二つ、ハートも二つ、手は四つ、コンピューターは一台
。メンロー社では、全てのエンジニアが二人一組で作業を行うとのこと。ペアは毎週入れ替わり、プロジェクトが都度変わることもある。このことは下記のような効果をもたらす。
- お互いの(高速な)学習に繋がる
- 知識の塔(その人しか知らないこと|暗黙知)をなくすことができる
- 8時間気が抜けないので、結果的に生産性が上がる(めっちゃ疲れそうw)
- ペアの専門性・興味・生い立ちなどを知ることで、ペアを組んでいるときには関係のないことでも、のちのち助けを求めることができる
1. はエンジニアの人なら一度は経験しているはずで、スーパーな方と一緒に作業をすると、精神と時の部屋にいるかのごとく学びを得ることができる。それが毎日、毎週続くのはかなり楽しそう。やってみたい。(同時にヘロヘロになりそうだけど。3. に繋がる)
2. はチームのスケールの話にも関連していて、チームにメンバーが加わるときに普通であれば立ち上がりのコストが掛かるが、この方式であれば毎週立ち上げをやっているようなものなので、スムーズにチームがスケールアウトする。暗黙知もなくなるので、運用フェーズにスケールインすることも容易。引き継ぎのための資料が必要なくなる。
良いことばかりなのは分かるけど、ここまで徹底できるのはすごいなー。日本でこういうことやってる会社あるのかな?
アジャイルな話
4章はいわゆるアジャイル開発の話。メモとしては、
- デイリースタンドアップは、バイキングのかぶとをバトン代わりにする。真面目になりすぎないような役目を果たしている
- ビジネスの両側(ビジネスチームと開発チーム)で、定期的かつ健全な会話を行う
- 見積もりは、2, 4, 8, 16, 32, 64 時間のいずれかから選択する
- タスクボードに貼られないとタスクは始まらない
- 縦に曜日、横にチーム(ペア)のマトリックスを作り、終わったタスクには完了を示すシールを貼る。横に伸ばした糸が張られていて、毎日下に降りていく。そのため、どのペアが苦戦しているかが分かり助けにいきやすい
- 「すばやくたくさん間違える」文化。まずはやってみる。
と言ったところです。
見える化文化は非常に面白いと思う反面、物理で(紙で)タスク管理するのは過去にうまくいかなかったことがあるので、何がうまくいった要因なのか知りたい。
曜日xペアのマトリックスは非常によいと思った。それを見て助ける文化は、Slackの分報に近い文化を感じる。
細かい話で言うと、見積もりがフィボナッチじゃないんだー、64時間って結構大きくない?1スプリントに収まってないけどいいの?あたりが気になりました。
最後に「バイキングのかぶと」の話はいつか採用したい。↓の記事で書いた「朝会で茶目っ気を出す」と同じ話なのかなーと。
採用の話
5章。この本で一番おもしろかったパートの一つ。大変そうだが、この採用方式を少しでも取り入れられると、会社も雇われる側も幸せになれると思う。大前提として、 スキルではなく「人」で採用する
こと。そして、 インタビューだけでは「人」は分からない
。実際の仕事に近い状況で、お互いを知るように進める。
1次試験:エクストリームインタビュー
仕事をシミュレートしたインタビューを行う。候補者同士でペアを組み、演習(エンジニアであれば、見積もりや紙を使ったデザインなど)をする。相手が知らないことがあれば共有して助けて、ペアを二次試験に進められるように意識する。各ペアに社員がついて観察する。観察者は「この人と一週間ペアを組みたいか。困ったときに支えてもらえるか。支えたいか。」を考える。ペア、観察者を変えて3回この演習を行う。
その後、観察者全員で二次試験に進めるべきかを考える。ここでは文化に合致しているか(本の中では 幼稚園レベルのスキル
と書いていた。周りとうまく遊べるか、人と分けあえるか)を見る。ひとりの候補者に対して、3人の観察者がいる。全員の意見がGoなら先に進むし、NGであればそこでおしまい。意見が割れた場合は、喧々諤々の議論をする。その議論を通して、 社員の間で 会社の文化の意図を強固にする作用があるとのこと。面白い。
二次試験、三次試験:実際の仕事をする
二次試験は社員とペアを組み 実際の 案件の作業を行う。午前と午後でペアを入れ替えて二人と組むことになる。ペアを組んだ社員に対して「この人ともう一度ペアを組みたいか?」という質問をする。
答えがYesであれば、三次試験は三週間一緒に仕事をする。ここでは通常の仕事と同様、一週間同じ社員とペアを組む。三人の社員とペアを組み、お互いに 文化にあっているかを確認する。
サービスデザイン
6章。いわゆるサービスデザイン、UXデザイン関連の章。自分たちが作ったソフトウェアを人が使ってくれ、嬉しい体験だと感じてくれること
がメンローでの喜びの根源。生み出すプロダクトやサービスを使ってくれる人達の要求に答えるために会社は存在する。
プロダクトを使う人を理解するためにペルソナを作る。まずはとにかく対象者を探す。(これもペアで行う!本ではこの作業者たちのことを ハイテク人類学者
と呼んでいる。UXデザイナーのことなのかな)とにかく対象者を探し、観察し、ペルソナを作る。ペルソナは数十パターン作る。
その上で、プライマリペルソナを「ひとつだけ選ぶ」。必ずひとつだけ。顧客に選んでもらう。誰にとっても役立つプロダクトを作ろうとすれば、誰にとってもあまり役に立たず、市場で淘汰されてしまう。顧客には、「ここまで(数十個もペルソナを)用意してきた僕達に免じて、プライマリペルソナをひとつだけ選ぶ(という難しい)ことをお願いさせてください」と言う。
その後、セカンダリペルソナをふたつ、サードペルソナをみっつ選んでもらう。機能を考えるときは、まずプライマリペルソナ。セカンダリペルソナ用の機能であれば、「プライマリペルソナの邪魔にならないようにするにはどうすればよいか」を考える。
ハイテク人類学者に求める条件がずらっと書いてあるので、サービスデザインに行き詰まったら自分に何が足りないのかをふりかえる材料に使いたい。
その他メモ
テスト
- 自動ユニットテストは厳格にやる。メンローで最も強固な技術的な規律。
- 終盤での結合を避ける。継続して結合し続ける。
- 定期的に顧客と成果を共有する。早めに失敗に来づけるように。
働き方
- 実は、完全なフレックスタイムやリモートワーク(在宅勤務)の制度がない。(ただし、必要に応じてそういう働き方をする実験はしている。)全員が物理的に同じ場所で働くことが、筆者の経験上一番よい。イノベーションが生まれるという意味でも。(ここは賛否両論あるよね、と筆者も言っている)
- どちらかというとちゃんと休んでもらう。ペアを組んで暗黙知を減らしているので、長期休暇を容易に取れる。(PC持ってかなくていいし、メールも見なくていいよ)
- 「最悪の文化は、誰も会社をやめない文化」。他で経験・体験をして、また戻ってくればいい。
その他のその他
- 疑問や提案、そういったものを出すのに恐れが発生する組織は硬直化する
- メンローベイビーズ。赤ちゃんと一緒に働く。メンローの両親たち全員に、赤ちゃんの「初めて」を見逃さないようにするのが目標(素晴らしすぎる!!!!!)
- メンローのチームメンバーは、収入の最大50%までを、働いているプロジェクト(顧客の株式?)に投資することができる!
- チームメンバーが面白そうな本を見つけたら、会社は何も質問をせずに買う。
まとめ
読み終えた熱量のまま、ガーッと殴り書きしてみました。支離滅裂なところも多いかもしれませんがお許しください。とにかくよかったです。エンジニアとエンジニアに関わる人が、もれなくこの本を読んでくれたら、みんな幸せになれるんじゃないかと思いました。
紹介されてるアプローチは、その背景や経緯、うまく行かなかったことも書いてあるので、導入の際は役に立つと思います。また、メンロー社において、各アプローチが行われている風景写真が掲載されているのもよかったです。ぜひ読んでみていただければと思います。

- 作者: リチャード・シェリダン
- 出版社/メーカー: 翔泳社
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