【書評メモ】「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」がとても良かった話

 以前から興味のあった「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」を読みました。非常に勉強になる内容だったので、個人的なメモを残しておこうと思います。

子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業

子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業

「プログラミング教育」は「プログラミング言語の学習」ではない

 2020年から始まる「プログラミング教育」の必修化ですが、その内容や狙いについて1章にまとめられています。授業は、 Java や Python といった「プログラミング言語」を使いこなすことを目的とせず、「プログラミング的な思考」などを育むことが狙いとのことです。詳細については、文部科学省の下記の URL でまとめられています。

小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ):文部科学省

 プログラミング教育の必修化の背景としてITが生活に浸透してきたことがあげられますが、そのような社会の中で、

  • 情報を読み解く
  • 論理的・創造的思考により課題を発見・解決し、新たな価値を想像する
  • よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを活かそうとする

ことがプログラミング学習の結果として育みたい能力と定義されており、一言で言うと「普遍的に求められる力としての論理的思考力」を養いたい狙いがあるようです。

 プログラミングに置いて重要な「抽象的な動作や処理を、分解し、順番に実行する」というフローを理解することで、「物事を分解し本質を見極める」という論理的な構造を考える力を養うことが狙いではないか、と本書には書かれています。

保護者が取るべきスタンス

 保護者の取るべきスタンスについて、著者の方の考えが2章でまとめられています。大きなポイントとして、

  • 興味をそがない
  • 子供の知的好奇心に対して、必要なものを提供する

のふたつが紹介されていました。

 「興味をそがない」については、プログラミング教育だけに言えることではなく、幼児や小学生のお子さんをお持ちの全ての保護者の方が意識すべきポイントだと思います。せっかく子供が興味をもっているのに、「xxなんて将来役に立たないよ」「あの先生はダメだね」といったことを伝えてしまうと、子供のモチベーションを下げることに繋がります。かといって、親が主導となり「xxをやろう」「今日の目標はドリルxページだ」となってしまうと、子供の興味にそった学習とは言えません。子供の知的好奇心に伴走する気持ちが大切だと感じました。

 では、「子供の知的好奇心」に対して、何を提供してあげればいいでしょうか?本書では、

  • プログラミング学習のできる絵本
  • ビジュアルプログラミングツール(Scratchなど)

といった小さい子でも学べるものから、

  • ロボット
  • テキストコーディングできる機器

といった、小学生くらいのお子さんがチャレンジしやすいものまで紹介されていました。4章、5章では「テキストコーディングできる機器」のひとつとして IchigoJam を用いた、親子によるプログラミングの始め方の例が紹介されています。ステップバイステップで子供が楽しく挑戦できるような内容だと感じました。

 筆者の方の意見として、「保護者も一緒に学んでいくスタンス」が重要とのことです。「大人が学ぶ姿勢」を見て子供も学んでいくので、大人が「プログラミング学習とは模倣の集合である」ということを理解した上で、「魚をあげる」のではなく「魚の釣り方」を身をもって学ぶ姿を示すことが大切だと理解しました。

 余談ですが、以前、社会人の人が初めてプログラミングを学ぶ方法について書きました。

www.ketancho.net

本書の中には、社会人向けのプログラミング学習についてもヒントが散りばめられてると感じました。このタイミングで改めて考えてみようと思いました。

その他

 これまでに紹介した内容以外に、

  • 3章: 日常で使う家電などで考える「プログラム」の基本
  • 6章: 中学生や高校生のプログラミングの学び方
  • 7章: 情報モラル教育

といった内容が紹介されています。3章は、小学生低学年のお子さん(幼児でも年長さんは分かるかも)と一緒に、「電子レンジはどうやってうごいてるんだろうね?」と考える材料になると思いました。論理的な思考力はもちろん大切ですが、それ以上に「なぜ?」と思える力を育むことは非常に重要だと思っており、そういう力を付けるきっかけにも良いと思いました。

 6章、7章について中学生以上のお子さんをお持ちのお父さん、お母さん向けの内容です。特に7章については、デジタル・ネイティブ世代にとって必須な知識だと思います。

まとめ

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 去年の5月にプログラミング教育のボランティアをさせていただき、その頃から小学生や幼児へのプログラミング教育について関心が高かったです。ただ、2020年からの新しい教育課程について正直全く理解できていない状況だったので、この本を通じてキャッチアップできてよかったです。非常に勉強になりました。さらに、子供に対して物事を教える際のスタンスについても気づきが多々ありました。この本をベースに、子供やプログラミング初学者に教えるときの方法論を自分なりに整理していきたいと思います。

 こちらの本は Kindle Unlimited の対象となっているので、私はそれで読ませていただきました。Kindle Unlimited は1ヶ月無料で体験できるので、この本に興味を持たれた方はこれを機会に無料体験するのもよいかもしれません。

子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業

子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業